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海外ドラマおすすめコラム vol.92 大作映画のような最先端の技術にもご注目を! 「スタートレック ディスカバリー シーズン4」

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5月のスーパー!ドラマTVの目玉は「スタートレック ディスカバリー シーズン4」の日本初放送。
 
筆者は機会がある度にこう言っている。“「スタートレック」はこの「~ディスカバリー」から見るのもあり”と。
惑星連邦、クリンゴンなど、専門用語が多い「スタートレック」だが、分からない単語はネットで調べればよし。原点「宇宙大作戦/スタートレック」以来の伝統で登場人物たちの人種が多様な上、ジェンダーの幅が広いのも若い視聴者になじみそうだ。
 
そしてもう1点。前作「スタートレック エンタープライズ」の終了から12年後に本作は始まったが、その間の映像技術の進歩がしっかりと反映され、しかもシーズンが進む度にぐんぐんと向上しているのだ。
思えばシーズン1第1話の撮影は『パシフィック・リム』などの映画で知られる名手ギレルモ・ナヴァロが担当していたが、ナヴァロは本作のクリエイターの一人で、ブライアン・フラーのドラマ「ハンニバル」で計6話を監督していた。
もう一人のクリエイター、アレックス・カーツマンも劇場で上映できる品質をめざしたとか。
 
しかしこのシーズン4の準備が進んだ2020年、コロナ禍が到来。収録開始が遅れて脚本をブラッシュアップできるメリットはあったが、どうやって収録するのか。
そこでスタジオに“ビデオ・ウォール”が設置された。LEDがびっしり詰まった、真上から見ると円筒の270度分もある巨大な壁だ(「マンダロリアン」でも使われた)。出演者たちは、建設に多人数が必要なセットではなく、壁に映される映像の中で演技をしたが、俳優陣は演技に集中できたはず。
他にも天地がひっくり返ったような移動ショットなど、VFXのみならず撮影器材も最先端だろう。
 
亡くなった作家・翻訳家の野田昌宏氏は“SFは絵だ”と語っていたそうだが、本作、特にシーズン4は“絵になる”シーンが多い。米国のSF映画界の権威、サターン賞で2年連続、SF・TVシリーズ賞に輝いた実力を堪能したい。
 
 
 
【海外ドラマ評論家 池田敏 2024/4/30】
 
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。